OSO SFL

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Blog | 人が変わるために必要な、変わらないもの

OSO SFLは2021年4月25日(日)、神奈川県で活動するFC MATと共同で「超実践的! ボールの持ち方vsボールの取り方クリニック」を開催しました。

FC MATとは「スペインサッカークリニック」系でのクリニック開催はあったのですが、今回は隈崎が南米パラグアイでプレーしていた経験をもとに「対人」系の内容でした。

プロフェッショナルの試合では、一人の選手がボールに触れる合計時間が2〜3分と言われています。そのため、いかにプレーを優位に進めるためのオフ・ザ・ボールができているかが鍵となります。

対人プレーではそのオフ・ザ・ボールの質が顕著にでる局面です。いわゆる「良い準備」ができている選手がボールをキープでき、または奪うことができます。我武者羅に立ち向かうのではなく、相手と自身の特徴からどのように立ち回れば優位に立てるのかを考え、プレーをすることが大切です。

また、この過程があるからこそ「ボールを奪う楽しさ」「守備って大切なんだ」という感覚が芽生えてくると思っています。

こんな風に書いている私も、高校まで鼻を垂らしながらボールめがけて猪突猛進していました。そんな私が「守備ってこうやってやるんだ!」と意識が変わったきっかけがありました。

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高校時代の練習試合で、私に近寄ってきた相手の監督が教えてくれた事

高校一年生の時でした。

練習試合で数本試合をやった後、グラウンド整備をしていると背後から声をかけられました。「ちょっといいかい」。振り返ると相手の監督がニヤリとした顔をしながら話を続けました。「相手が(隈崎)の前で縦パスを受ける時に、どうやってボールを取ればいいかわかるかい?」。

突然の質問に、私はただ首を横に振りました。そうすると監督は表情を変えずに「こうするんだよ」と私の股の間に足を入れてきました。

「いいかい。君は体が大きいんだから、相手の股から足を出して(ボールを)突っつくんだ。それで相手のプレーが遅れるだろ?」

「はい」と私が返事をすると、その監督は歩き出し近くにいた自チームの顧問と話し始めました。

ほんの数分の一コマでしたがその頃から、相手に突っ込む守備から「どうやって上手くボールを奪いに行こうか」に意識が変化していきました。私の身長は185㎝です。日本人の中では大きな方なので、対人は強いと思われがちですが、あるレベルまで行くとそう簡単にはいきません。「どうやったら相手に勝てるか」のトライ&エラーを数え切れないほどトレーニングしてきた選手は、あらゆる状況下でも優位に立つ解決策を見つけてきます。

あの監督に言われた記憶は、なぜか鮮明に覚えています。対人や守備のスキルは南米でプレーしていた時に一番変化したのは間違いないのですが、そのベースにあったのは高校時代でした。

私はフットボールクリニックを開催していますが、時折、チームやスクールを引き合いにクリニックの意義について考えます。そして行き着く先はいつも、この監督とのシーンです。自分たちの監督でもないし、毎日会うわけでもない。だけどたまたま、その一言がきっかけで私は変わりました。だったらクリニックも普段チームでプレーしている選手が隈崎と会ったことで、何かの意識が変わってくれれば、その後時間が経つに連れ、徐々に大きな成長になっていくのではないか。

フットボールにおける伝統や伝承とは、繋がりと成長を作り出すもの

私が体験したことをさらに考えてみると、スポーツ然りフットボールの伝統や伝承と言われている本質とは「人と人が繋がって、成長するためのきっかけ」なのではないかと考えています。

私が見聞きする育成事情では「急速な間隔でアップデートされる指導理論やスポーツ科学を活用しながら、無駄なく円滑に選手を成長させる、または教えていくかが大切」ということが、よく取り上げられています。それはとても重要で、ハード面を含め選手が高みを目指せる環境構築に大賛成です。

ただ、「昔ながらの」とか「伝統」といったものが、本質を見ずにNGのレッテルを貼られてしまう空気を感じることがあります。

しかし、人が変わるきっかけは、やはり人が作り出すもの。それが「伝える」という原始的でありながら、今までの人類発展に欠かせない普遍的なものである以上、フットボール発展でも必要不可欠な要素です。

フットボールのプレーでも指導でも様々なものが変化していきますが、「人が変わるために変わらないもの」も大切にしていきながら、これからも活動していきたいと思います。