前回のフットボール勉強会の続き。
勉強でもスポーツでも、目的があって人は納得して動くもの。
フットボールの現場でも、指導者は選手にトレーニングの目的を教えることで、テーマややることの明確を狙う。
しかし、キャリアを積んだ指導者の中には、真逆なことをする人もいる。
それを成り立たせるにはいくつかのファクターが必要だ。容易に浮かび上がるものには、試合で結果を出す、ということだろう。他にはトレーニングが上手く流れている、とか。
ただそのなかで一番大切なことは、選手が指導者に対して納得するかどうかだろう。
「あの監督はときどき無茶苦茶なことをやるけど、試合では上手くいくし、なにより自分自身が上手くなっている」
こう思った選手は、その指導者を信頼していくし、選手の思いを知った指導者は手応えを感じるだろう。
ただ、このサクセスに至るには、指導者がトレーニング中に選手に起こしてもらいたいプレー現象を、自然に起こるようにデザインしなければならない。
何度も起こるその現象をもって、指導者は間接的に選手をより質の高いプレーへと導いていく。選手にとっては、指導者から直接伝えられていないのに、「なぜだか上手くいく」という魔法のような状態になる。
これが質の高いプレーを無意識化で実行できる状態を指す。
この指導スタイルは、誰しもが簡単に真似できない。いきなり指導者がこんな態度でトレーニングをスタートさせたら、選手やスタッフから反感を買う可能性もある。そうなってしまっては本末転倒だ。
となると、指導者の経歴や人格が大きく関係するのは間違いない。直感的な表現でいうと「スゲー!」と思わせるファーストインプレッションを持つ人ができる業だろう。
また、選手を伸ばすために起こす現象も的確かつ複数回にわたり発生させる必要がある。なのでオーガナイズには、実際の試合のプレーを再現する緻密さが常に求められる。
一見すると普遍的なトレーニングでも、指導者の意図を理解する過程で、「かなり大切なことをやっていたんだ……」、なんてこともあるに違いない。
今日の勉強会で話してくれた人は、実はその指導者でなく、教わっていた選手から。話のなかで、一番感慨を覚えたのは「控えが多い選手に好きな監督を聞くと、今までに教わった監督の中で、この監督が一番いいと言っていた。なぜなら、『毎日成長させてくれたから』」と強く言っていたことだ。
指導者をやっている人なら、このフレーズで胸がジーンとなる。一人になった瞬間に泣いちゃうくらい嬉しい。
世の中にこういう指導者が増えていけば、もっともっと日本のフットボールが豊かになると思った。
そしてもし、指導の仕事に戻ることがあったら、選手にフットボールを一生懸命伝えようと思った。