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スカウトは選手の何を見ているのか? ジュニア世代から考えていきたい、フットボールの強さとは

日本フットボールでは、クラブが設けたセレクションに選手が参加するケースが一般的。欧州や南米では、クラブに所属するスカウトがヴィビジョンの垣根を超えて、未来のスター発掘のために地方まで足を運ぶという。

 

スカウトの対象は高校生や大学生年代だけに限らず、小学生年代も同様。各クラブのスカウトは、地方の大会に顔を出しては光る原石を探している。

 

フットボーラーを育てるのは、指導者や保護者だけではない。もう一つ、大切な人がいる。それが「観客」だ。フットボールは見られるスポーツであり、選手は「見られている」ことを自覚し、よりうまく、魅力あふれるプレーをしようと研鑽を積む。

 

そして、クラブとパイプを持つスカウトが訪れた時、「俺のプレーを見てくれ」と、自信を持って選手はプレーに挑む。当然、スカウトが見に来る情報を事前に知ることはあまりない。選手はすべての試合でベストパフォーマンスを披露することに努めなければならない。

 

この「見られる」環境を体感してもらおうと、2021年12月28日と2022年1月5、6日、東京都と神奈川で開催するOSO SFLウィンターキャンプ2021-22を開催する。

 

キャンプ開催に当たり、当日、実際に選手を見るスカウトの山田長太氏に、選手の何を見ているのか、海外と日本の選手の違いについて話を訊いた。

 


 

――「スカウトの目に留まる」というフレーズがあります。実際、どのような選手がスカウトに強い印象を与えるのでしょうか?

 

山田 基本的なテクニックのレベルの高さは前提ですが、どのポジションもこなせるユーティリティープレーヤーより、特徴がはっきりしている選手の方が印象に残ります。

 

相手からボールを取られないキープ力、視野の広さを生かした展開、絶妙なタイミングでの裏への飛び出しなど、試合のシチュエーションのなかで「俺はこのプレーだったら誰にも負けない」というメッセージが伝わってくるような特徴です。

 

――なるほど。ポジション別でいうと具体的にどのような特徴を指しますか?

 

山田 試合のシチュエーションによって、見るべきところも変化しますが、ベースとなるポイントは以下のとおりです。

 

  • フォワード:得点力、キープ力やシュート精度、見方を活かせるポストプレー
  • サイド・ウィング:足が速い、縦への推進力がある、局面で打開できる
  • ミッドフィールダー:展開力と視野の広さ、ボールを失わないキープ力、技術力
  • センターバック:DFの対応力、足元の技術、ボール奪取後のプレー

 

フィジカル要素が強く関係する場合、個人的な戦術も駆使してプレーできているかも大切です。

例えば、縦への突破を試みる選手が、対立しているDFより足が遅い場合、オフ・ザ・ボールの段階でアドバンテージが取れるポジショニングをしているか、などです。

特にジュニア世代では、これからフィジカル要素が伸びるので、それ以外のテクニックや戦術面でうまくなろうとチャレンジしているかの姿勢が見えるかが重要です。

 

――現状と未来を総合して評価しているんですね。山田氏は欧州や南米の選手を多く見てきているわけですが、日本の選手との大きな違いは何ですか?

 

山田 決定的な違いはフィジカルの強さです。これは昔から言われていることですが、日本人選手の足元の基礎技術は、世界で見ても非常にレベルが高いです。私も実際に見て確信しています。

ただフィジカルコンタクト、特に球際が弱く、ボールロストが多い。日本人が海外で活躍する上で、フィジカル面での課題はまだまだ残っているのが現状です。

 

また、選手がトレーニングをする上で「自分の長所をとことん磨く」ことに重きを置いている印象を受けます。日本だと苦手なプレーを克服する習慣があると思います。

もちろんそれ自体は悪いことではないですが、だったら得意なことをとことんトレーニングして、周りの選手が真似できないくらいのクオリティーに持っていく

例えば、空中戦に長けている選手であれば、10回勝負したらすべてマイボールにできるくらいのレベルにする。それだけで選手自身だけでなく、チーム自体の特徴となります。

 

最後にハングリーでエゴイストな選手が海外には圧倒的に多くいます。フットボールはチームスポーツなので、戦術やチームワークは欠かせません。

ですが、海外では「個があるからこそチームとなる」という意識が強い。ディフェンダーであれば「担当するエリアに相手が侵入してきたら、絶対にボールを奪う」、フォワードであれば「ここでボールを受けたら、俺がフィニッシュする」というような強い意志があります。フットボールのエゴイストは利己主義というより、自身のプレーをはっきり表現するというニュアンスのほうが適当でしょう。

だからこそ、それができなかったときの悔しさや怒りのパワーは相当なものです。ハングリーも、単純に悔しいという感情ではなく、「俺のプレーができなかった・他の選手に奪われた」という明確な理由のもとに湧き上がる感情だと捉えています。

 

――彼らのマインドにはそういった明白な理由があったのですね。最後にウィンターキャンプでは、「いつもプレーしているポジションではなかったらどうしよう」と思っている参加選手もいると思います。やはり慣れたポジションでプレーするほうが有利なのでしょうか?

 

山田 大人の選手であれば、長年プレーしているポジションがあるので大きく影響があるでしょう。また、今回のキャンプに参加する選手の中にはプレーがしやすいポジションがあるかもしれません。

 

ただ、大切なことはどのポジションでも持ち味や自身を持ったプレーをパフォーマンスすることです。想像してほしいのは、仮にスカウトされた先のクラブで同じポジションでプレーできる保証はないということです。

 

クラブや監督によって選手に求めるプレーや戦術は千差万別です。ジュニア世代の選手は、フットボールを楽しむことが一番大切ですが、年代が上がるに連れ、プレーには「仕事」の要素が加わってきます。それはチームとして勝利を勝ち取ることが最大の目的になるプロフェッショナルな環境である証であり、選ばれた選手はそこで100%のパフォーマンスを発揮することが求められます。

 

キャンプでは、皆さんの熱いプレーが見られることを楽しみにしています。楽しくも真剣に、このキャンプでたくさんの刺激を受けてくださいね。

プロフィール
山田長太|Chouta YAMADA
1996/06/12生まれ。
2016-2018:株式会社ジェルティワールドトレーディング(代理人会社)で代理人研修(パラグアイ&スペイン)。
2018-2019:NIAGAR SUR(スペイン代理人会社)
2019-2021:shuma PTE.LTD (代理人会社)
2021-:株式会社Azul Marino を設立

OSO SFLウィンターキャンプ2021-22はコチラ

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